オープンカフェ

(まちづくり提言①)


パリ・シャンゼリゼ通り(左)と、トレド・ソコドベル広場(右)。この風景を、広島にも作ろう!

(パリの写真提供:井澤知旦氏(世界のカフェテラス

  私が「広島の都市観光」を考える上で「一番の切り札」と考えているのがオープンカフェです。何故そう考えるのか、はちょっと置いておいて、早速、エリア別のオープンカフェスタイルを見ていきましょう。

①平和大通り

 言わずと知れた、幅員100m・延長約4kmの広幅員道路です。同レベルの広幅員道路は、日本では名古屋・仙台・札幌(あれは公園か?)にしか存在しません。(つまり、西日本唯一ということになる)
 「美しい広幅員道路」というとパリのシャンゼリゼ通りを思い浮かべる人は多いでしょう。
 平和大通りは今後の改良次第では、「東洋のシャンゼリゼ」と言われるレベルの街路になる可能性を秘めていると私は思います(すなわち、それだけで観光名所になり得るということ)。
 では、平和大通りがどうすればシャンゼリゼのようになれるのか。その大きなポイントの一つが、オープンカフェであると考えます。シャンゼリゼ=オープンカフェというイメージがありますが、同様のことを広島で行なえないでしょうか?
 …実は、平和大通りでオープンカフェが実現しないのは、単純に法的整備がされていないという理由だけです。(後述)
  とりあえず法律を無視して、平和大通りで自由にオープンカフェができるとなったら、どんなカフェが出来るでしょうか?  以下、私の妄想をお楽しみ下さい。

 

CASE1.個性派カフェ
 まず、下の写真を見て下さい。いずれも平和大通り沿いの店舗です。


  左は、広島でも屈指の人気を誇るカフェ「J-CAFE」です。東京の有名なインテリアデザイナーが設計したとか。一方右は広島で人気のレストラングループ「SAN MARIO」が経営するレストラン「リストランテ マリオ」です。いずれも平和大通りの景観を巧みに取り入れているのが印象的です。オープンカフェが許されるならば、こういったお店はものすごくお洒落な店を作ることでしょう。(左のカフェなどは、今でも勝手に道路にはみ出してやっている感もあるのですが…)

 

CASE2.大手カフェ

NHKビルのスタバ。全席禁煙。眺めが良いのは  確かだが、喫煙者からするとくつろげない。
NHKビルのスタバ。全席禁煙。眺めが良いのは 確かだが、喫煙者からするとくつろげない。

 スターバックスに代表される大手カフェの類、最近は「喫煙はテラス席でね」という店が増えてきています。敷地面積の狭い街中の店では、喫煙者は隅っこに追いやられているのが現状です。
「平和大通りのスタバは喫煙者もくつろげる」となると、そのスタバは喫煙者の集まりになるでしょう。そんなお店があってもいいんじゃないでしょうか? NHKビルのスタバ、一階に降りてこない?

CASE4.高層ホテル

このホテルなどは、その気になれば明日からでもオープンカフェが実現できそう。
このホテルなどは、その気になれば明日からでもオープンカフェが実現できそう。

 平和大通りは高層ホテルが乱立しています。これらのホテルが「テラス席で朝食が採れますよ」なんてやりだしたら、絶対はやると思う。朝食だけでなく、ちょっとした待ち合わせとかにも使えるカフェテラス。かっこいいと思うけどなぁ。

 

番外編.もみじ饅頭
 左は宮島口にある「もみじ本陣」の写真です。何だ、日本にも昔からオープンカフェあったんじゃん!!  て感じの写真ですが、どうせなら、平和大通りの下でもみじ饅頭が食べたいなぁ。そうだ、にしき堂田中町店があるじゃん!!

広電宮島口駅の目の前にある、「もみじ本陣」
広電宮島口駅の目の前にある、「もみじ本陣」
もみじを植えて、「もみじの下でもみじ饅頭」なんてどうでしょう?
もみじを植えて、「もみじの下でもみじ饅頭」なんてどうでしょう?

どうすれば平和大通りにオープンカフェが出来るか
 ここまで、私の妄想ばかりを述べましたが、実は広島市も同じことを考えていた時期があり、1998年から4年間、平和大通り上でオープンカフェの社会実験が行なわれました。

  それが現在立ち消え状態になっているのは、様々な要因があります。最も大きな問題なのは、法律上の問題(道路法・道路交通法)です。
 ここでは詳しくは触れませんが、要するに、①道路法は「道路上のオープンカフェ」を想定していない ②道路交通法は「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的」(第1条)としているので、「賑わい創出のためのオープンカフェ」などは認められない  という状況にあり、「道路上のオープンカフェ」は簡単には実現しないのです。
  広島市の社会実験でも、この問題をクリアしようと苦労した跡が見受けられるのですが、結局は法律の壁を越えることが出来ず、「社会実験」のまま終了したという経緯があります。
  ところが、最近流れが変わりつつあります。2005年3月、国が「道を活用した地域活動の円滑化のためのガイドライン」というものを策定し、「道を活用しての地域活動を応援します」と言い始めたのです。また、併せて警視庁も「民間事業者等による経済活動に伴う道路使用許可の取扱いについて」という通達を出しており、その中では、「オープンカフェの類について、直ちに否定的な判断を下すことなく、諸条件(交通への影響等)を総合的に勘案した上で、個別具体的に判断すること」という趣旨のことを言っています。
  この結果、法律面では随分オープンカフェ実現が容易になりました。

横浜市日本大通りのオープンカフェ(2005年、社会実験として実施)。沿道店舗が地先のテラス席を店舗の一部として経営している。(写真提供:arch-hiroshima)
横浜市日本大通りのオープンカフェ(2005年、社会実験として実施)。沿道店舗が地先のテラス席を店舗の一部として経営している。(写真提供:arch-hiroshima)

 簡単に言うと、①公共性・公益性に配慮されていること ②地域における合意形成があること  ③交通の安全と円滑を確保すること  等の条件が満たされれば、道路上であっても営利目的のオープンカフェが実現できることになりました。
 実際、各地での社会実験が活発になって来ており、横浜市などでは道路占用料を徴収してのオープンカフェを実現しています。
 広島市では現在、目立った動きはありませんが、今後都市観光を育てていく上で再度チャレンジしていく価値はあります。
  過去の社会実験の中で、法律面以外では以下の点が問題になった様子です。
 ①屋外での事業のため、天候に左右される。
 ②厨房等の経費負担が大きく、短期間で利益を出すことが難しい。
 ③周辺の一部飲食店から、民営圧迫という反対意見が根強くあった。
 ④建物の建設や、電気・水道等のインフラ整備の問題。

 実はこれらの問題は、「道路に面した飲食店にオープンカフェ経営を任せる」という方法を取れば一気に解決します。(このページの一番上、パリやコペンハーゲンの写真を参照。横浜等も、このやり方で社会実験を行なっている)
  例えば、現在の平和大通りを以下のように改良したらどうでしょうか?要するに、「歩道を大幅に拡幅し、その一部をオープンカフェスペースとして利用する」という方式です。

この周辺などは、①駐車場を廃止し、側道にする。②廃止した側道分歩道を拡幅する だけでオープンカフェのスペースが出来る。駐車場はどこでも造ることが出来るが、シャンゼリゼ並みのオープンカフェは平和大通りでしか作ることは出来ない。どちらが相応しいか、答えは出ているようなものだと思うのだが…。
この周辺などは、①駐車場を廃止し、側道にする。②廃止した側道分歩道を拡幅する だけでオープンカフェのスペースが出来る。駐車場はどこでも造ることが出来るが、シャンゼリゼ並みのオープンカフェは平和大通りでしか作ることは出来ない。どちらが相応しいか、答えは出ているようなものだと思うのだが…。

  …実はこの図面、広島市のサイト「平和大通りリニューアル」のページに出てくる図面とほとんど同じです。(こちら
 結局、広島市も同じことを考えている、ということでしょう。やはり、公道上のオープンカフェは、この形がベストと思われます。
 これはそれほど難しい話ではありません。まずは、オープンカフェの実現に向けて、警察署・地元住民等と充分な協議を行なう。そうすれば、おのずと「必要な環境整備(歩道幅員等ハードの問題、実施におけるルールの策定等ソフトの問題)」が見えてくるはずなので、それを整備する。それだけの話です。
  費用面では歩道の拡幅・側道の付替え程度しか費用が掛かりません。その気になれば、「1年後には平和大通りがオープンカフェで埋め尽くされた」という状況を作ることも可能でしょう。ぜひとも、早急に手掛けてもらいたい事業です。ここまで見てきた通り、平和大通り沿いには既にその景観を意識している店舗も存在しています。そういったお店を上手く活かし、「日本版シャンゼリゼ通り」を実現してもらいたいものですね。

②河岸緑地

 平和大通りはこのくらいにして、次に河岸緑地を見てみましょう。
 実は、河岸緑地のオープンカフェについては、広島市は全国のトップを走っており、国や地元住民と協力して、確実に成果をあげていっています。

1999~

記念すべき「河岸緑地のオープンカフェ第一号」(元安川沿い)。第一号ということもあり、①実行委員会が運営(民間ではない)、②仮設店舗と、法の網をかいくぐった形で運営されている。
記念すべき「河岸緑地のオープンカフェ第一号」(元安川沿い)。第一号ということもあり、①実行委員会が運営(民間ではない)、②仮設店舗と、法の網をかいくぐった形で運営されている。

2004~

地先利用型オープンカフェ。第一号の実績が評価されたのでしょう。国の特例措置適用区域の指定を受け、一部の河岸緑地で営業活動が行えるようになりました。現在このタイプではホテルフレックス、JALシティ広島(写真)、RCC文化センター、musimpanenが営利目的のカフェを運営しています。
地先利用型オープンカフェ。第一号の実績が評価されたのでしょう。国の特例措置適用区域の指定を受け、一部の河岸緑地で営業活動が行えるようになりました。現在このタイプではホテルフレックス、JALシティ広島(写真)、RCC文化センター、musimpanenが営利目的のカフェを運営しています。

2005~

京橋川沿いに生まれた独立店舗型オープンカフェ。すべて民間経営。しかも河川敷に構造物を造っている…。
京橋川沿いに生まれた独立店舗型オープンカフェ。すべて民間経営。しかも河川敷に構造物を造っている…。

2008~

第一号の改良発展型。第一号で認められなかった「常設店舗」「民間経営」という問題を見事にクリア。これなら、観光客にも自信を持って勧められる。
第一号の改良発展型。第一号で認められなかった「常設店舗」「民間経営」という問題を見事にクリア。これなら、観光客にも自信を持って勧められる。

 これらに加えて私が期待したいのは「広島駅前Bブロック」です。間もなく完成を迎えるBブロック再開発。再開発ビルの正面(裏面?)にこんなカフェが出来たら、そこにはどんな会話が生まれるでしょうか?

2011現在

近未来(?)

シンガポール:ボートキー(写真提供:arch-hiroshima


プロ野球観戦に来た、ある山口県人の会話。(妄想)
A「いい試合だったね~。新幹線まで時間があるし、ちょっとお茶でも飲んで帰らない?」
B「そこに気持ちよさそうなカフェがあるよ。そこにしようよ」
A「うん。広島はオープンカフェの街だもんね。今日は時間がないから平和大通りまでは行けないけど、次回は平和大通りまで行きたいね」
B「平和大通りなら、私はアンデルセンがいいな。でも、ここのコーヒーも美味しい。広島はカフェのレベルが高いから、美味しい店ばかりだね」

オープンカフェまとめ
…色々と妄想を述べましたが、「平和大通り=オープンカフェ通り」、あるいは「広島=オープンカフェの街」というイメージが定着すれば、それは博多の屋台に匹敵する観光資源になると思います(そのためには集積が必要です)。
 また、個性派カフェが集い、競争することによって「有力店」が現われ、それは一つのブランドを築く可能性があります。(現在、お好み焼きにはその傾向があります)
  また、今回はカフェの話ばかりしましたが、場所によってはお好み焼きの屋台、あるいは特産の牡蠣を使ったお店(オイスターバーとか)も考えられるでしょう。
  広島には、平和大通りや河岸緑地など、他都市と比較してオープンカフェの実現が容易な環境が既に存在します。緑豊かな空間でありながら、これまで「道路」や「堤防」でしかなかったこれらの施設が「カフェテラス」に生まれ変わったとき、広島は日本一のオープンカフェの街になることでしょう。

 

関連リンク