広島の市内交通を極める

(広島観光案内③)


 広島市の都心部である紙屋町・八丁堀地区は、広島駅から約2㎞離れた地域にあります。福岡で言う、博多駅~天神地区にイメージとしては似ているのですが、福岡と違い、広島には地下鉄が走っていません。

 代わりに、路面電車等が走っているのですが、お世辞にも分かりやすい交通体系になっているとは言えず、広島駅や都心部で、行先に迷っている来訪者を良く見かけます。

 そこでこのページでは、広島の街中の公共交通機関の利用方法をご案内します。

 

①路面電車

 広島の代名詞とも言える、路面電車(通称:ひろでん)。市内移動の際の、最もポピュラーな移動方法です。まずは、その路線図を示しておきます。街中の主要地点を通っています。

 ただ、他の都市にあまり存在しない形態の交通手段のため、乗り方等がわかりにくいと思います。詳しくは、こちらを見ていただければと思いますが、もの凄く簡単に言うと、「入口」と書いてあるドアから乗って、「出口」と書いてあるドアから降りる。料金は、降りる時に220円(市内線の場合)料金箱に支払う、と言うことです(右下図参照)。乗り方としては、バスに近いですかね。(ICOCAのような、主要な交通系ICカードも利用可能です。その際は、乗るとき、降りるとき両方でタッチしてください)

  

この路面電車を利用する際に、気をつけなければならない点がいくつかあります。

(路面電車の路線図。公式HPより)

(路面電車の乗り方。「入口」から乗って「出口」で降ります。こちらも公式HPより)


・広島駅での乗り場に気をつけろ

 JR広島駅を出た際、最初に皆さんが目にする光景は、写真Ⓐの光景です。目の前に「広島駅」とありますが、気をつけてください。ここでそのまま路面電車に乗ってしまうと、その電車は都心部を通らず、そのまま広島港に行ってしまいます。

 都心部行きの電車はこの乗り場から約100m先(東)の写真Ⓑの箇所から出ます。

 平面図でまとめると、次のとおりとなりますね。

 

 路面電車に乗っていて、車内放送で「この電車は、5番線、比治山下経由、広島港行きです」と言っていたら要注意。その電車は都心部には行きません。運転手や車掌に相談してください。キーワードは「5番線」「比治山下経由」です。その電車は都心部を通りません。(広島港行きでも、1番線は都心部を通ります) 

(写真Ⓐ。目の前の電停からは、都心部行きの電車は出ません)
(写真Ⓐ。目の前の電停からは、都心部行きの電車は出ません)
(写真Ⓑ。都心部行きは、この電停から発車します)
(写真Ⓑ。都心部行きは、この電停から発車します)

 ・「電車は早い」は先入観

 広島の路面電車。残念ながら、スピードに難があります。地図だけを見て、「広島駅~紙屋町まで、わずか2kmだな。路面電車に乗れば、5分程度で着くだろ」なんて勝手に判断してはいけません。わずか2kmを、15分かけて走るのが広島の路面電車です。一応、主要地点と所要時間の一覧表を貼っておきます。間違っても、「広島駅から宮島口まで、JRでも路面電車でもどちらでも行けるのだな。よし、路面電車の方が安いので路面電車で行こう」なんて判断をされないように。宮島口まで、JRなら30分弱で行きますが、路面電車なら1時間以上かかります。

公式HPより)



② アストラムライン

 ここまで読まれて、「けっ。広島、不便だな。そんな、路面電車なんて乗ってられないよ。地下鉄ないのかよ、地下鉄!」と思われた貴方! そんな貴方のために、「なんちゃって地下鉄」を用意しました。JR広島駅から西へ1駅。「新白島駅」からは、地下鉄とほぼ同様の機能を有す、新交通システム「アストラムライン」に乗ることが出来ます。アストラムラインなら、新白島から県庁前まで3分、本通までも4分で着きます。これは便利でしょ♪


(JR新白島駅からアストラムライン新白島駅を眺める。これは便利です)
(JR新白島駅からアストラムライン新白島駅を眺める。これは便利です)
(アストラムライン「県庁前駅」。地下鉄のようなものと考えてOKです)
(アストラムライン「県庁前駅」。地下鉄のようなものと考えてOKです)

 ただ一つだけ。注意してほしいのが、「アストラムラインはあまり本数が多くない」ということです。平日昼間で、10分間隔で走っています。そして、不親切なことに、JR新白島駅には、アストラムラインの時刻表が貼ってありません。(その逆もしかり)

 なので、JR新白島駅に到着した時点で、スマホ等でアストラムラインの時刻表を確認することをお勧めします。一応、下記にアストラムライン、JRそれぞれの時刻表を貼っておきます。

 

アストラムライン時刻表

JR新白島駅時刻表

 

③ 都心循環バス「エキまちループ」

 ここまで、路面電車、アストラムラインと見てきましたが、2018年5月、新たな交通機関が加わりました。バスの都心循環線「エキまちループ」です。

(このロゴマークが目印です)
(このロゴマークが目印です)
(このように、ロゴマークがバスに貼ってあります。(他に、赤いバスも走っています))
(このように、ロゴマークがバスに貼ってあります。(他に、赤いバスも走っています))

 広島駅では、駅から一番近い「1番のりば」に直行してください。「エキまちループ」専用のバス停です。大きく分けて、2路線走っています。

(駅から一番近いバス乗り場「1番のりば」です)
(駅から一番近いバス乗り場「1番のりば」です)
(路線図。大きく分けて、「紙屋町八丁堀行き」と「平和大通り行き」の2路線となっています。)
(路線図。大きく分けて、「紙屋町八丁堀行き」と「平和大通り行き」の2路線となっています。)

 運賃は220円(小児110円)。降りる時に払います。ICOCAのような、主要な交通系ICカードも利用可能です。その際は、乗るとき、降りるとき両方でタッチしてください。

  広島駅から八丁堀まで約5分。平和大通り直行便もあり、と言うことで非常に便利です。是非、ご活用ください。

 

 

 レンタサイクル「ぴーすくる」

(広島港のポート)
(広島港のポート)

 もう一つ、実は広島の街中移動を行うのに最強の乗り物があります。それはレンタサイクル「ぴーすくる」です。

  元々、三角州の上にできた広島の街。なので、市街地には勾配のきつい坂は少なく、自転車利用に適した街と言えるでしょう。

 利用方法はこちら。東京などで展開中の自転車シェアリングシステムと同じ方式とのことで、慣れている人ならば、便利だと思います。

 

 ここで一つアドバイス。広島の市街地を自転車で移動しようと思ったら、河岸緑地がとっても便利かつ快適。信号が少なく、また、心地よい緑地はサイクリングにお勧めです。


(原爆ドーム近くの相生橋から、北方面に向かおうと思った場合、河岸緑地を利用すれば500m程度、信号に出会わなくて済みます)
(原爆ドーム近くの相生橋から、北方面に向かおうと思った場合、河岸緑地を利用すれば500m程度、信号に出会わなくて済みます)
(御幸橋という橋から、北方面を眺める。ここから河岸緑地を使って北方面に向かった場合、800m以上、信号に出くわすことはありません)
(御幸橋という橋から、北方面を眺める。ここから河岸緑地を使って北方面に向かった場合、800m以上、信号に出くわすことはありません)

(広島の河川敷はとっても美しく整備されています。サイクリングにお勧めです)
(広島の河川敷はとっても美しく整備されています。サイクリングにお勧めです)
(この界隈の河岸緑地も良いでしょ?)
(この界隈の河岸緑地も良いでしょ?)

 もう一つ、広島のシンボル的道路と言えば平和大通り。市街地を自転車で東西に移動する場合は、平和大通りがお勧めです。別名「100m道路」と言われているだけあり、充分な幅員のある緑地帯が存在します。せっかくのサイクリングです。このような、心地よい空間を通られることをお勧めします。


 

⑤広島港からのアクセス

 ここまでは、広島駅からの移動をメインに記載して来ましたが、最後、海の玄関口である広島港(宇品港)からの移動について記載します。広島港の旅客ターミナルを出ると、目の前に路面電車の大きなターミナルがあり、「よし、ここから電車に乗って移動しよう」と思いがちですが、ここはちょっと注意が必要です。先ほどから述べている通り、広島の路面電車は速達性に大きな問題を抱えており、広島港→都心部(紙屋町八丁堀)、あるいは広島港→広島駅は、ともに所要時間30分以上かかります。

 広島駅やマツダスタジアムに向かうには、他に有効な交通手段が少なく、路面電車でやむを得ない感はありますが、広島港から都心部(紙屋町八丁堀)に向かう場合は、路面電車より路線バスの方が遥かに早く、20分程度で到着します。

 なので、広島港から都心部に向かう際は、路面電車ではなく、バスに乗ることをお勧めします。港を出たら、まっすぐ進み、「21-1」「21-1」と記載してあるバス停からバス(赤いバス)に乗りましょう。(東側にある「21」のバス停からは乗らないように。こちらはいわゆる「下り線」で、都心部→広島港→元宇品地区と、郊外に向かって走っていきます)

 帰りは逆に、街中にある「21号線」のバス停からバスに乗れば、広島港にたどり着けます。公式のご案内はこちらのとおり。赤いバスです。

(港を出たら、赤い矢印のとおり進み、写真に写っている赤いバスに乗りましょう)
(港を出たら、赤い矢印のとおり進み、写真に写っている赤いバスに乗りましょう)
(都心部行きバスのバス停です。ここから、「21ー1」あるいは「21ー2」のバスに乗りましょう)
(都心部行きバスのバス停です。ここから、「21ー1」あるいは「21ー2」のバスに乗りましょう)

 

 以上、広島の市内交通のご案内でした。①路面電車、②アストラムライン、③都心循環バス「エキまちループ」、④レンタサイクル「ぴーすくる」、⑤路線バス 等を上手く使って、快適な広島でのひと時をお過ごしください。


 提言①:広島型パークアンドライド

 話は少しずれますが、広島でも、郊外型SCが数多く立地しています。広島のケースが他の地方都市と違うのは、「郊外型SCの多くが軌道系交通網の沿線にあり、路面電車などの利用も便利である」という点です。つまり、巨大な駐車場と駅が隣接して立っているということで、これは見方を変えれば、絶好のパークアンドライドの状況にある、ということですね。行政とうまくタイアップして、パークアンドライドの積極的な導入って出来ないものなのでしょうかね?

(広島での郊外型SCの先駆者である「アルパーク」は、ペデストリアンデッキでJR「新井口駅」、広電「商工センター入口駅」と繋がっています)。
(広島での郊外型SCの先駆者である「アルパーク」は、ペデストリアンデッキでJR「新井口駅」、広電「商工センター入口駅」と繋がっています)。
(フジグランナタリーは、アルパークと同じく、JR駅、広電駅とペデストリアンデッキで結ばれています。)
(フジグランナタリーは、アルパークと同じく、JR駅、広電駅とペデストリアンデッキで結ばれています。)

(JR緑井駅前には、フジグラン緑井店、ラクア緑井、コジマ電機が並んで建っており、全てがペデストリアンデッキで結ばれています。また、実際に通勤客を対象に一部パークアンドライドを実施しています。)
(JR緑井駅前には、フジグラン緑井店、ラクア緑井、コジマ電機が並んで建っており、全てがペデストリアンデッキで結ばれています。また、実際に通勤客を対象に一部パークアンドライドを実施しています。)
(イオンモール広島府中店は、JR天神駅から徒歩5分であるほか、広島駅までのシャトルバス(100円)が出ています。)
(イオンモール広島府中店は、JR天神駅から徒歩5分であるほか、広島駅までのシャトルバス(100円)が出ています。)


(広島には、「ゆめタウン」という地元資本の大型SCがありますが、その広島本店(写真左)は路面電車の「皆実町6丁目」電停前、安古市店(写真右)はアストラムライン高取駅の駅前という絶好のロケーションにあります。)

 

 と言う具合に、パークアンドライドを実施するのに絶好の状況にある広島の郊外型SC群。これらを地図にまとめてみました。是非、パークアンドライドの導入をお願いしたいものだと思います。


提言②:「幹」の交通機関整備

 率直に言って、広島の街中は公共交通網が貧弱です。その最大の原因は、「軸となるべき公共交通機関がない」ことでしょう。よく、交通網整備は「幹と枝葉」の理論で整備されますが、広島の街中には「幹」となるべき交通機関がありません。

 本来であれば、広島駅~都心部~西広島駅、あるいは都心部~広島港という路線は、間違いなく「都市の軸」あるいは「幹」となるべき路線であり、地下鉄や新交通システムのような、軌道系交通網を整備するべきでしょう。

 まあ、時代背景もあり、地下鉄の建設などは事実上不可能ですが、だからと言って放置しておくわけにはいかないでしょう。2023年現在、路面電車の駅前大橋線の整備など、少しずつ改良が進んでいっている感はありますが、まだまだ足りません。

 特に広島港からの交通網整備について、ずっと放置されている状況であり、本文中で述べたとおり、広島港から都心部まで、路面電車で30分以上かかるという現状があります。

 財政難もあり、整備が進まないというのもわからないことではないのですが、なんとかならないものでしょうか。広島の都市としての求心力が落ちてきていると言われている中、瀬戸内の島しょ部や、四国・松山からのアクセスが今のままというのは大きな問題を感じるところです。まずは、広島空港のようにリムジンバスを走らせるとか、めいぷる~ぷのようなループバスを走らせるとか、出来るところから改善を図るべきだ、と思うのですがいかがでしょうか。