(まちづくり提言③)
① はじめに
広島の街の最大の個性の一つに、プロ野球「広島東洋カープ」の存在があることは誰しもが認めるところでしょう。近年は「カープ女子」などのブームも起き、広島の都市観光の推進に大きく貢献しています。
さて、このカープ球団。球団経営については、特定の親会社に依存せず、独立採算制を貫いてきており、その姿勢は賞賛すべき点が多々あります。ただ、一方で、そのせいで、優勝から長い間遠のいたり、「お荷物球団」扱いされたりした時期もありました。今(2015年)でこそ、年間観客動員数が200万人を突破して「人気球団」扱いされていますが、現在の状況はあくまでもブームに過ぎず、また人気が低迷する時期が来てもおかしくありません。また、広島県の人口も確実に減少しており、今のままの人気はそう長くは続かない、と考えるべきでしょう。また「お荷物球団」扱いされる時代が来る可能性も充分あります。
今から約10年前の2004年は、まさにそんな時代でした。オリックスと近鉄の合併により、球団数を減らし、1リーグ制に移行するという話が出た年です。確かに、国民の趣味の多様化、そして待ち受ける人口減社会を考えると、「球団数を減らす」という案は、理解できる話ではありました(賛同はできませんが)。そして、今後も同様の話が出てきてもおかしくない、と私は思っています。今後もし、同様の話が出て、球団が減らされることになった場合、どのような球団が減らされることになるでしょうか。ポイントは2点あると考えます。①国民から高い支持を受けていない球団 ②経営が厳しい球団 ではないでしょうか。
② 中四国地方のカープに
まず、「国民から高い支持を受けていない球団」について考えてみたいと思います。
地方都市の球団をみた場合、日本ハムは北海道全域、楽天は東北全域、ソフトバンクは九州全域からそれぞれ支持を受けている様に見えます。これはプロ野球からすると大きな財産で、仮にソフトバンクホークスが消滅することとなると、福岡だけではなく、九州全域で大幅なプロ野球離れが進むことになります。それはプロ野球全体でみると大きな損失であり、仮に1リーグとなった場でも、「プロ野球全体を考えると、やはり九州・福岡には球団が必要だ」という話になるでしょう。
一方、カープはどうか。広島では絶大な支持を受けているものの、中国地方全体で考えると支持は決して高くない。岡山県や鳥取県は阪神ファンが大多数を占めると言われ、山口県はホークスファンや、かつてフランチャイズであったベイスターズのファンが多いと言われる。これでは、「カープがなくなっても困るのは広島人だけじゃん」と言われてしまいます。やはりカープも、もっと広い範囲で愛される球団になる必要があるのではないでしょうか。
もっと広い範囲。これは要するに、「中国四国地方」となってきます。その中でも、特に西側の広島県、愛媛県、山口県、島根県を重要視する必要があるのではないでしょうか。
まずは愛媛県。四国最大の県で、人口50万人を超える、四国最大の都市・松山市を抱える愛媛県。前々から思っているのですが、準フランチャイズを松山に置き、年間10試合くらいは松山で開催したらどうでしょうか。
何? チケットが売れない? いやいや、売るための努力をするのです。地元企業・メディアとタイアップして、とにかく売る。年間10試合として、その10試合分の年間指定席なんてものも売っても良い。買ってくれる企業あると思いますよ。また、その松山開催試合用限定のユニフォームを作っても面白いかもしれませんね。
また、愛媛との連携を図るなら、キャンプも一部愛媛県で実施できないでしょうか。愛媛県でも、宇和島市辺りならかなり暖かいはずです。適した球場ないですかね。
プロ野球のキャンプと言うものは、かなりの経済効果がありそうです。選手やコーチが、一定期間その地域で生活し、マスコミやファンも集まってくる。中途半端な観光振興よりよほど効果がある。その恩恵を愛媛県にも味わってもらい、ついでにカープファンになってもらいましょう。やはり、特定の地域で愛されるようになるためには、その地域の発展に貢献するようでないと難しいと思います。
その意味では、山口県でも、地域の発展に貢献する活動を行い、カープファンを増やすことを考えたいですね。具体的に言うと、カープ2軍を、1軍と運営を切り離し、球団名も変えて山口密着の球団にしたらどうでしょうか。
イメージとしては、以前行われていた、横浜ベイスターズの2軍「湘南シーレックス」のような感じです。
例えば、2軍のチーム名を「山口キャッツ」などとし、現在の由宇球場や、岩国市に建設中の新球場「きずなスタジアム」を中心に、山口県下全域で試合を開催していく。ユニフォームも独自のものとする。そういう努力を行い、山口県でのカープ人気向上に努める。山口の人の目を、福岡ではなく、広島に向けさせましょう。そういう努力も必要だと思います。
山口県、カープが根付く土壌あると思いますよ。由宇練習場がある岩国市や柳井市界隈の他、マツダの工場がある防府市、そして故・津田恒実投手の出身地である周南市等の皆さんを中心に、是非カープファンになってもらいましょう。
2014年6月には、その周南市野球場(愛称:津田恒実メモリアルスタジアム)で2軍の試合を開催したそうですね。スタンドは、約4500人のファンで赤く染まった様子です(右中央写真)。
こういうの、良いですね~。2軍は、しっかり山口県に溶け込んで行きましょう。
あとは島根県ですね。島根県は、プロ野球開催に適した球場が存在せず、なかなか難しい面があります。(隣接する米子市では定期的に主催試合を開催していますが)
2014年、カープ球団が、関東在住の女性カープファン(いわゆるカープ女子)に向けに、カープ観戦ツアーを実施しました。148人の募集枠に2305人の申し込みがあったとか。(右下写真参照)
こういう企画、山陰のファン向けにあったら良いですね。バスを1台チャーターしてのツアー。ただし、帰りはある程度自由を持たせてあげたいので、帰り分のバスは、2日間有効の高速バスチケットをプレゼント。松江発のツアーがあっても良いし、浜田発のツアーがあっても良いですね。
ついでに言うと、先ほどの愛媛県との連携。準フランチャイズにするだけでなく、ここでも、観戦ツアーを組んだらどうでしょうか? スーパージェット1台チャーターして。
このような営業努力を続けていけば、「カープは広島・島根・山口・愛媛を中心に、中四国全域で愛されている球団だ」ということになり、1リーグ制も決して怖くないのではないでしょうか?
③ 経営体質の強化
とは言え、カープ球団はもう一つ大きな問題を抱えています。特定の親会社に依存していないため、経営基盤が磐石とは言い切れない、という問題です。
特定の親会社に依存せず、黒字経営を維持しているというのは、当然褒められるべきことですが、今後のことを考えると、本当にそれだけでこれからも通用するのか? と不安に駆られます。 独立採算制は維持するとして、もう少し、年間5億円程度でも、収入を増やす方法ないですかね…。
私がパッと浮かぶのが、Jリーグの各クラブのユニフォームです。Jクラブは、ユニフォームに広告載せて、広告料いただいていますよね。(右上写真参照)
まあ、プロ野球もヘルメットや袖の部分に広告が載るようになりましたが、一番広告の価値がありそうな、胸の部分への広告は認められていません。ここ、何とかならないでしょうか?
こういう点、オーナー会議等で提案出来ないものでしょうか?
次のような会話が想像できますね。
カープ「ユニフォームの胸の部分に、スポンサーの広告を載せさせてくれないか。他球団はほとんど企業名載せているじゃないか。うちも広告載せてもよいだろ?(右下写真参照)」
他球団「いやいや、あれは企業の広告じゃなくて球団名なんだ。広告がユニフォームに載るのは下品だ」
カープ「どう見ても広告に見えるけどね…。ユニフォームに広告が載るのが駄目で、球団名に企業名が入るのがOKという理屈も良く分からないんだが。」
他球団「球団経営に責任を持って取り組んでいる企業が、球団名に企業名を入れるのは別に悪くないだろ。ユニフォームに広告入れたいって言うけど、そういうスポンサーは経営に責任持たないだろ? ユニフォームの大事な部分に、安易に広告入れられても困る。」
カープ「別に安易に広告入れようとしている訳じゃないんだけど…。まあ、じゃあ、うちも、全く関係ない会社の広告を載せるのではなく、筆頭株主の会社ならどうだ? 今でも、旧社名を球団名に入れているぞ」
他球団「そこまで言うなら、球団名変えなよ…」
…ここで確認しておきます。我らがカープ、「特定の親会社に依存していない」と言いますが、現在のカープ球団の株主が誰か知っていますか? wikipediaによると、マツダ㈱34.2%、松田元20.4%、カルピオ 18.5%、松田弘 12.2%、松田勢津子
10.1%となっています。(足しても100%になりませんが…)
この株主構成、何か微妙ですね。「松田家関連」とまとめて捉えると、筆頭株主は松田家ということになりますが、単体で考えると、筆頭株主はマツダということになります。しかも所有株式は全体の1/3を超えている。1/3を超えるということは、重要案件で株主の2/3の同意が必要な案件はマツダの同意が必要という事になります。マツダは、「親会社」とは言えないとしても、球団経営上、非常に重要なポジションを占める筆頭株主であるとは言えますね。
こういう状況、上手く活用できませんかね。「筆頭株主の広告を入れさせろ」とまず主張し、それで理解を得られなかったら、一歩譲って球団名の変更を行う。
マツダはカープ球団の筆頭株主です。それならば、別に直接経営に関与していなくても、球団名に企業名(マツダ)が入っていてもおかしくないはずです。株主の同意が得られれば、球団名変更ぐらいできるはずです。つまり、松田家とマツダにその気があれば、いつでも球団名に「マツダ」の名前を入れることぐらい出来るはずです。もし、「広島マツダカープ」が問題なら、「広島東洋カープ」という現在の球団名も問題があることになると思います。
念のため言っておきますが、これは球団の身売りではありません。単に球団名を変更するだけ。球団経営はこれまでどおり松田家が行えばよい。その代わり、球団名に「マツダ」を入れる。まあ、広告料収入目当ての、苦肉の策です。
でも、その代わり、球団名を変えることによって、ユニフォームを堂々とこんなものにすることが出来ますよ。
で、グッズもこんなものにすることが出来る。
ユニフォームに「マツダ」の文字を入れることにより、マツダからしっかり広告料をいただきましょう。かつて、近鉄球団が球団名を売り出そうとしたことがありました。その時、名前を売却して得ようとした額は年間36億円(×5年契約)といわれていました。マツダに同等の額を負担して欲しいとは言いませんが、5億円程度ならいただいても良いと思います。マツダも、オールスターゲームのスポンサーになるよりは、球団名に名前が載るほうが広告になるのではないでしょうか?(ちなみに、近鉄球団が球団名の命名権売却に失敗したのは、私はいまひとつ理解できません。球団名の命名権って、前例あるのですよ。太平洋クラブライオンズとか、クラウンライターライオンズとか。何故、近鉄球団は認められなかったのでしょうか? まあ、どちらにしても、「広島東洋カープ」が「広島マツダカープ」となるとのは、レベルが違う話ですね。筆頭株主の名前が会社名に入る。何も問題がないものと思います。)
④ まとめ
いかがでしたでしょうか? これまでのカープの歴史を踏まえつつ、一番現実的と思われるカープ球団改革案を出してみたつもりです。この中で、球団名に企業名を入れることに難色を示す方もいらっしゃるかと思います。私も、本当は嫌です。せめて、ユニフォームの胸の部分に広告を載せる程度で済ませたい。そこはオーナー会議などで充分訴えて欲しい。理想を言うならば、球団名は「広島カープ」と、もうすっきりしたものにして、その代わり、胸の部分に広告を載せたいところです。
しかし、現状のプロ野球界では、それはなかなか難しいのではないか… と思い、苦肉の策として、最後の手段として、球団名の変更は検討する余地がある、と思っています。
なので、球団名が仮に「広島マツダカープ」となっても、これまで通り、「広島カープ」と呼べばよい。今だって、誰一人「東洋カープ」と呼んでいないのですからね。
地域密着型のプロスポーツチームを作ること。そしてそれを支援してもらうスポンサー、株主に、企業としてそれなりのメリットを与えること。このバランスをとるのは、非常に難しい面があります。しかし、それをうまく乗り越えないと、この国のプロスポーツは育ちません。「市民球団・広島カープ」を生んだ広島から、「プロスポーツチームのあるべき姿」を模索していきたいものですね。
なお、このテーマは、多くの方が興味のあるテーマだと思いますので、多くの方の意見をお伺いできれば、と思います。私のブログの、2014年6月13日付の記事(こちら)。このページ発足をお伝えする記事です。ここのコメント欄に、自由にコメントをお寄せくださいませ。